2025/05/07
今回は音楽理論を学ぶ重要性と併せまして、学びすぎる欠点について詳しく解説させていただきます。
音楽理論を学ぶ重要性は、音楽を「感じるだけでなく、理解し、意図的に表現できる」ようになることにあるだけでなく、音楽検定筆記試験においても意味を持ちます。
しかし、音楽理論に頼りすぎる場合の欠点や短所も多く存在するので、併せてご参照くださいませ。
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音楽理論を学ぶ重要性
1.音楽の仕組みを理解できる
音楽理論は、音楽がどのように構成されているか(メロディー、ハーモニー、リズムなど)を体系的に理解するための「言語」です。これを知ることで、
•なぜそのコード進行が心地よいのか
•なぜそのメロディが耳に残るのか
が論理的にわかるようになります。
逆に言うと、理論が分かることで「心地良いコード進行や耳に残るメロディーを理論的に作り出すことができる」というわけです。
2.作曲や編曲の幅が広がる
理論を知っていれば感覚頼りではなく、意図した通りの感情や雰囲気をコントロールできるようになります。たとえば
•ドリアン・モードを使ってクールな雰囲気を出す
•転調を使ってドラマティックにする
•代理コードを使って予想外の展開を作る
など、選択肢が圧倒的に増えることで、作曲やアドリブ演奏の幅が劇的に広がります。
これを知らない状態でソロ作りなどをすると、「こんな雰囲気にしたいんだけどどうすれば良いか分からない」「とりあえず色々弾いてみよう」という感じで、偶然イメージ通りになるのを待つしかありません。
しかし多くの演奏者には手クセというものが染み付いているため、なかなか自分のクセを抜け出すことが出来ず、結局いつも同じようなフレーズになってしまうのです。
それを簡単に抜け出すことのできる武器が音楽理論です。
3.耳コピや即興演奏が上達する
理論を理解していれば、「耳で聴いたものを理論的に分析する」力がつきます。•「この進行はII-V-Iだな」という風に、すぐにコードが予測できる
•「この旋律はミクソリディアンっぽいと感じれば、キーやルート音からすぐにスケールを導き出せるため、耳コピなどの速度も飛躍的に速まります。
また、即興演奏においても、コードに対するスケールやアプローチが自然に浮かぶようになりるだけでなく、浮かんでくるフレーズの幅も広がります。
4.メンバーや他のミュージシャンとスムーズにコミュニケーションできる
例えば「この曲の最後はF#で終わろう」、「ギターソロはCドリアンスケールで弾いてみて」などの会話があった場合、音楽の最低限の知識や理論を知らないメンバーだと話になりません。セッションやバンド練習で「ドミナントにセカンダリードミナントぶつけよう」「ペンタトニックにハーモニックマイナーを混ぜてみて」などの会話ができれば、作業効率が圧倒的に上がるだけでなく、意図した通りの曲や演奏に仕上がる確率も上がります。
5.感性 × 理論のバランスが最強
よく「理論は感性を殺す」と言われることもありますが、実際には逆です。理論を知っているからこそ、「なぜ心が動いたのか」を解剖し、それを再現・発展させることができます。感性と理論は敵同士ではなく、むしろ最強のパートナーです。
「理論は感性を殺す」と言うのは大抵「音楽理論を知らない人」であることがほとんどです。自分が理論を知らない、理解できない、または学ぶ気がないからといって理論否定派になりますが、音楽理論というものは一度知ってみると非常に便利で、手放すことが出来なくなります。
スマートフォンやグーグルマップのように、なかった頃はそれはそれで問題なく待ち合わせなどをしていたはずですが、一度スマートフォンを持ってグーグルマップを使ってしまうと、「今まではどうやって待ち合わせをしていたんだっけ?」と分からなくなってしまうほど便利です。
また、「理論は感性を殺す」と言いますが、それは「理論に殺される程度の感性」なのではないでしょうか?
音楽理論を学んだ程度で殺されてしまう感性であれば、最初から人の心を動かすことなど出来ません。
6.実用面:プレイヤーとしての力が伸びる
■コードの仕組みを理解できる
たとえばCメジャーコードをピアノで覚える場合はド・ミ・ソの3音ですが、ギターで覚える場合にはコードダイアグラムを見て形のみで覚えてしまい、その構成音がド・ミ・ソであることに気付きにくいようです。
そのため、CmやC7と言われると突然に作り方が分からなくなり、「そのコードは知らない」となってしまいます。
コードの仕組みを理解できていると、初めて見るコードネームでもすぐに自分で作り出すことが可能になるだけでなく、たくさんのコードを一気にたくさん覚えることが可能となります。
■コードの機能を理解できる
例えばC→F→G→Cという簡単なコード進行の場合にも、Cはトニック(安定、終止感)、Fはサブドミナント(不安定、ドミナントに行きたくなる)、Gはドミナント(トニックに戻りたくなる)という機能を知っていれば、
・次のコードが推測できる
・変な間違いをしなくなる
・耳コピが格段に速くなる
などのメリットが挙げられます。
クリシェや分数コードの意味、そして定番のコード進行パターンなどを知ることでそのメリットはさらに加速し、楽器のない状態でも「この感じはあのコード進行だな」と判断できるようになります。
■感覚ではなく論理的にソロを弾ける
たとえばギターで「Amのソロを弾いてほしい」という場面で、
・ナチュラルマイナー
・メロディックマイナー
・ハーモニックマイナー
・マイナーペンタトニック
など、様々なスケールの中から雰囲気に合うものを選ぶことが出来ます。
こういった選択肢を持っていないと、いつでもペンタトニックの一辺倒になってしまったりして、その曲に合うアレンジが不可能となってしまいます。
7.創作面:作曲やアレンジが飛躍的に進化
■曲作りの「選択肢」が激増する感覚だけで曲を作る、または最低限の理論だけで曲を作ろうとすると、似たような進行やマンネリ化した雰囲気になりがちですが、理論を知ると多くの選択肢が増えます。
•裏コード(tritone substitution):G7 → Db7(ジャズっぽく)
•モーダルインターチェンジ:Cメジャーの曲にAm(平行短調)から借りてきたコードを入れる
•コードの分数(onコード):C/E → F → G → Am/G …とベース音で流れを作る
■アレンジが論理的になる
たとえば、ストリングスやブラスを入れたいとき、単にオクターブ重ねてみただけでは非常に初歩的で誰でも思いつくアレンジとなってしまいます。
そこで音楽理論を知っていれば
•転回形(インヴァージョン)
•4度堆積やクラスターコード
•テンションの取り扱い(9th, 11th, 13th)
などを駆使して、豊かな響きにすることが可能となります。
8.学習面:成長のスピードが変わる
■独学でも「なぜこれが必要か」がわかるたとえばピアノの練習で「ハノンをなぜやるのか?」が理論的に理解できれば、単なる指の体操としてではなく「スケールとコードに基づいた手癖の育成」として活用できる。
■他のジャンルへの応用も効く
•クラシック:和声学や対位法に通じる
•ジャズ:コードスケール理論、テンション理論が土台
•ロック/ポップス:リディアン、ドリアンなどのモード活用
•EDM:サブドミナントマイナーや疑似転調で起伏を出す
理論を知っていると、ジャンルの壁がなくなる。
9.心理的な面:音楽に対する自信と創造性
■自信を持って演奏・創作できる自分の感覚だけに頼りすぎると、他者が聞いた時に聴き心地の悪いものになっている可能性がある。
また、本番での演奏中にミスをしてしまったり次のコードを忘れてしまった際にも、「このキーでこのコードなら…」と即座に頭の中で立て直せる場面も増えてきます。
■音楽の「言語」がわかる安心感
音楽理論とはつまり、音楽の世界での「共通言語」です。
様々な世界の音楽の歌詞の意味は分からなくとも、コード進行やスケールなどは世界中の音楽の共通言語です。
世界中のヒット曲を理論的に読み解けたり、世界的に有名なギターソロの構造が分かったりします。
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音楽理論を学びすぎる欠点
1. 感性や直感を抑え込んでしまうリスク
「正解」に縛られてしまう理論を学びすぎると、「この進行は間違ってる」「この音は不協和音だ」といった考えに縛られて、
本来は魅力的な意図的なズレや曖昧さを否定してしまうことがあります。
音楽は根本的には「感じるもの」なので、コード進行が理論的に破綻していても、それが曲の個性になる場合もあります。
感動よりも「構造」に気を取られる
音楽を聴くときに「このコードは代理ドミナントだな」「転調したな」といった分析が先に立ちすぎると、純粋に「いい曲だ」「心が震えた」という感動が薄れてしまうこともあります。
2.頭でっかちになって創作が止まる
「理論的に正しく作ろう」としすぎる作曲や即興演奏のとき、「このコードにこのテンションを使うには…」と考え込みすぎて、
結果的に手が止まってしまい、作業が遅くなることがあります。
正解か不正解かは作り手ではなく聞き手が決める事なので、理論は知った上であまり囚われないことが重要です。
理論に当てはめないと気が済まなくなる
「モードに分類できないからダメだ」、「理論的に説明できないから不安」となってしまうと、自由さが失われる。
専門学校を卒業し理論などを詳しく学んだバンドマンや音楽家の中には、「次の曲は新曲です。コード進行は〇〇を使用していて、2番で転調するところが上手くできました」などと曲の専門的な解説をしてしまう人も見受けられます。
それは自己満足以外の何物でもなく、飽くまでお客様は音楽的には素人で、専門的な解説を求めているわけではないと理解しましょう。
3.個性が薄れる危険性
理論に忠実すぎて「ありきたり」になる理論通りにコード進行を組むと、それっぽく聞こえるだけで逆に個性が感じられない曲になってしまうこともあります。
特に日本のJ-POPなどは同じコード進行、流行りのドラムパターンなどにとらわれすぎ、またこのパターンかと辟易される場面も多く見受けられます。
他人の理論に依存しすぎる
理論は所詮、天才が作り出したメロディーやコード進行を分析して言語化したものに過ぎません。
天才たちはそのような理論から組み立てて名曲を作り出したわけではないことを念頭に置いておきましょう。
4.音楽が「数字や公式」になってしまう
創作が数学のようになることも•コード進行=関数
•モード=スケールの組み合わせ
•テンション=論理的な装飾
こういった捉え方が行きすぎると、音楽が「公式を当てはめる作業」になってしまいます。
目的は聴き手の心を動かすことなので、あまりがちがちに考えないよう、飽くまでも感覚を補正するための理論という考えを根本に持っておきましょう。
改善すべき考え方
■理論は「後からの整理」に使うのがベスト
•まず感覚や直感で「これカッコいい」と思ったものを作る
•後から「なぜ良く聞こえるのか?」を理論で整理・分析
この流れなら、感性が先・理論が補助という健全なバランスになります。
■「間違ってもいい」と思えるマインドを保つ
理論は「選択肢を広げるためのツール」であって、「正誤を判定するジャッジ」ではありません。
同時に、「理論的に正しくない」=「音楽的に悪い」でもありません。
■“破るために知る”という意識
理論を学ぶ最大の利点は、自由に破るための土台ができることです。
武道における守破離のように、まずは理論を守り、次に理論を破ることで個性を出し、最後に理論から離れて自分だけのオリジナリティーを出すことができます。
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