【至高の名器!】ストラディバリウスの歴史/日本音楽能力検定協会

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日本音楽能力検定協会です。
今回はストラディバリウスの歴史について詳しくご説明させていただきます。

ストラディバリウス(Stradivarius)とは、主に17世紀から18世紀にかけて活動したイタリアの名工アントニオ・ストラディバリ(Antonio Stradivari, 1644年頃 – 1737年)によって製作されたヴァイオリンをはじめとする弦楽器のことで、楽器史上もっとも有名かつ評価の高い存在です。


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ストラディバリウスの歴史

1.背景と初期の時代(17世紀後半)

■クレモナの楽器製作の中心地
ストラディバリはイタリア・クレモナ出身。この町は16~18世紀にかけてヴァイオリン製作の中心地であり、ニコロ・アマティ(Niccolò Amati)などが活躍していました。ストラディバリはアマティの弟子または影響を強く受けた人物と考えられています。

■初期作品(1660年代〜1680年代)
この頃のストラディバリはアマティ様式の影響を受けた繊細な形状・装飾の楽器を作っており、現在では「アマティ・モデル」とも呼ばれています。音量や響きよりも美しさと精密な工芸性が際立っています。

2.黄金期(1700年〜1720年頃)

この20年間は「ゴールデン・ピリオド(黄金期)」と呼ばれ、ストラディバリの作った楽器の中でも最高傑作が多数生み出された時期です。

■特徴
•楽器のサイズ、アーチ(丸み)、厚みが最適化され、音響バランスが非常に優れる。
•パワフルで深みのある音色、遠くまで響く音量。
•フラットなアーチ形状と薄めの板構造により、反応の速い音。

■代表作
• 「メシア(Messiah)」1716年製:保存状態が極めて良く、ほぼ未使用。オックスフォードのアシュモレアン博物館に所蔵。
• 「レディ・ブラント(Lady Blunt)」1721年製:保存状態が非常に良く、過去にはオークションで15億円以上で落札。

3.晩年(1720年〜1737年)

高齢になったストラディバリは、息子たち(フランチェスコとオモボノ)と共に工房を運営。楽器の品質はやや不安定になるものの、黄金期と遜色ない名器も数多く存在します。

4.死後の評価と伝説化

アントニオ・ストラディバリは1737年に93歳で死去。その後、ストラディバリウスの楽器は「比類なき音色を持つ伝説の楽器」として評価が高まり、19世紀から20世紀にかけて多数の演奏家や王侯貴族が愛用するようになります。

■使用された著名な演奏家
•ヤッシャ・ハイフェッツ
•フリッツ・クライスラー
•イツァーク・パールマン
•アンネ=ゾフィー・ムター など

5.現存数と現代の価値

•現存数:約600挺(ヴァイオリンを中心にチェロ、ヴィオラなど)
•2020年代以降でも、ストラディバリウスは一挺あたり数億円〜十数億円の価値を持つ。
•音響特性や経年変化の解明、科学的研究が世界中で行われており、CTスキャンや材質解析も進んでいる。

6.なぜストラディバリウスは名器とされるのか?

木材の質
北イタリアで採取されたスプルースやメープルが用いられ、年輪が緻密。気候変動(小氷期)による影響も。

ニスの秘密
ストラディバリ独自の配合とされる赤褐色のニスが音響特性に影響している可能性。

精密な構造設計
力木の配置、アーチの高さ、板の厚みなど、すべてが計算された設計。

年月と演奏
長い年月を経て振動し続けることで、木材内部の構造が最適化され、音が熟成される

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ストラディバリウス名器リストと逸話(代表例)

ストラディバリウスの名器には、それぞれに独自の名前・逸話・所有者の歴史があり、多くの名演奏家や貴族が所持していたことから、音楽史や文化史の一部としても重要な位置を占めています。

1.メシア(Messiah)1716年製

現在の所蔵先:
オックスフォード大学アシュモレアン博物館

状態:ほぼ未使用、新品同様

逸話:
•ストラディバリ自身が手放さず生涯工房に残していたとされる。
•演奏されていなかったため傷がほとんどなく、「時を超えた名器」と称される。
•その「完璧すぎる状態」から「本当にストラディバリ作か?」と疑われたこともあるが、近年の科学分析で正真正銘であることが裏付けられた。

2.レディ・ブラント(Lady Blunt)1721年製

過去の落札価格:
2011年に約15億円で落札(歴代最高級)

名前の由来:
所有者だったイギリス貴族「レディ・アン・ブラント」に由来

逸話:
•アラビア探検家・詩人バイロンの孫娘が所持。
•長らく演奏されなかったため保存状態が非常に良好。
•東日本大震災の被災者支援のためにチャリティオークションに出品され話題に。

3.ヴィウティ・ストラディバリウス(Vieuxtemps Stradivarius)1741年製(チェロ)

楽器の種類:
チェロ(ストラディバリの晩年作)

逸話:
•フランスの名チェリスト、ジャン=バティスト・ヴィウティが所有。
•現在でも現役の演奏家に貸与されており、ステージでも使用されている。
•「最も美しい音を持つチェロのひとつ」と称される。

4. ダヴィドフ(Davidov)1712年製(チェロ)

現在の使用者:
過去にジャクリーヌ・デュ・プレ、現在はヨーヨー・マ

逸話:
•デュ・プレの魂の楽器として知られ、「エルガーのチェロ協奏曲」の名演で使われた。
•ヨーヨー・マはこのチェロで世界中の舞台に立ち、ストラディバリの現代的な響きを示している。

5.クライスラー(Kreisler)1733年製

所有者:
フリッツ・クライスラー(名ヴァイオリニスト)

逸話:
•クライスラーはこのストラディバリウスで数々の録音と演奏を行った。
•クライスラーの死後、米国の博物館などを経て貸与楽器として運用されている。

6.ソイル(Soil)1714年製

使用者:
過去にイツァーク・パールマン、ヤッシャ・ハイフェッツ


逸話:

•パールマンが長年にわたり愛用し、「自分の声にもっとも近い音」と称した。
•ゴールデンピリオド中期の代表作として、音の豊かさと反応の良さに優れる。

7.エクス=リュカ(Ex-Rukavina)1689年製

逸話:
•非常に古いストラディバリの作で、初期モデルの特徴を残す。
•美しい装飾と繊細な音質が特徴で、学術的価値も高い。

8.ミルスタイン(Milstein)1716年製

所有者:
ナサニエル・ミルスタイン

逸話:
•バッハの無伴奏ソナタやパルティータの録音で使用。
•ストラディバリの最高音質を室内楽で最大限に活かしたとされる。

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ストラディバリウスのオークション史:代表的な取引例

ストラディバリウスは、楽器の中でも最も高額で取引されることで知られており、そのオークション史は「音楽の宝石」とも呼ばれる名器たちが、数億円〜十数億円で売買されてきた記録です。以下に、ストラディバリウスのオークション史を代表的な例と共に詳しくご紹介します。

①レディ・ブラント(Lady Blunt)1721年製

落札価格:
2011年、約15.9億円(15,894,000ドル)

オークション:
Tarisio(オンラインオークション)

内容:
•東日本大震災のチャリティのために出品。
•ほぼ未使用に近い保存状態で、「メシア」に次ぐ完璧なコンディションと評価された。
•それまでのヴァイオリンとしての落札価格記録を大きく更新。

②「チェンバレン(The Hammer)ストラディバリウス」1707年製

落札価格:
2006年、約4億円(3,544,000ドル)

オークション:
クリスティーズ(Christie’s)

内容:
•1707年製の典型的な黄金期作品。
•音響のバランスと状態の良さから、現役演奏家によって競り落とされた。

③エックス=カザルス(Ex-Casals)ストラディバリウス

価格:
未公表(個人売買だが10億円以上と推定)

内容:
•スペインのチェリスト、パブロ・カザルスが使用していたストラディバリのチェロ。
•公開オークションではなく、個人コレクターにより売買。

④ザ・モリニー(Molitor)1697年製

落札価格:
2010年、約3.9億円(3,600,000ドル)

オークション:Tarisio

内容:
•所有者にナポレオンがいたという伝説がある(諸説あり)。
•モダンな演奏に耐えうる設計として高評価を受け、投資対象としても人気に。

⑤「レッド・メンデルスゾーン」1713年製

落札価格:
1990年、約1.8億円(当時の金額)

内容:
•映画『レッド・ヴァイオリン(The Red Violin)』のモデルとなった楽器。
•名曲「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」で知られる作曲家メンデルスゾーンの一族が所有していた。
•ストーリー性の高さでコレクターにとって特別な存在。

⑥ジュピター(Jupiter)1700年製

落札価格:
1988年、約1.2億円(当時)

内容:
•強烈な音量とクリアな響きが特徴。
•落札後、演奏用として活用された珍しいケース。

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ストラディバリウスの雑学10選

1.現存数は約500〜600台
•ストラディバリは900台以上を製作したとされ、2025年現在では約500台のヴァイオリンが現存。
• すべてに名前がつけられ、記録されている。

2.最も高価な楽器の一つ
•最も高額で取引されたヴァイオリンの一つ「Lady Blunt」は、2011年にオークションで約16億円で落札された。

3.「黄金期」の作品が特に評価される
•1700年〜1720年頃の製作楽器は「ゴールデン・ピリオド」と呼ばれ、特に音が素晴らしいとされる。
•例:Soil(ソイル)1714年製、Messiah(メサイア)1716年製

4.科学者たちの研究対象に
•音響特性の謎を解くため、CTスキャン、X線、化学分析などが行われてきた。
•木材に含まれる鉱物や防腐剤、樹脂の含有量が独特であるという研究も。

5.素材は北イタリアの木材
•ストラディバリは、高品質な「アルプスのスプルース(表板)」と「メープル(裏板・側板・ネック)」を使用。
•当時は「小氷期」と呼ばれる寒冷期で、年輪が詰まった密な木材が手に入ったとも。

6.演奏者によって音が変わる
•ストラディバリウスは楽器自体の音質もさることながら、「誰が弾くか」によって音が大きく異なる。
•ヤッシャ・ハイフェッツ、イツァーク・パールマン、アンネ=ゾフィー・ムターなど名演奏家が所有していた。

7.現代製作家との「目隠し比較実験」も話題に
•ストラディバリウスと現代製作の高級ヴァイオリンを演奏者に目隠しして弾かせる実験が何度も行われた。
•その結果、現代の楽器の方が好まれるケースも多く、「ストラディバリ神話」の見直しも議論されている。

8.複製モデルも多数
•ストラディバリウスの型を模した「Strad Model」は世界中のヴァイオリン製作家の基本モデルに。
•有名な複製楽器ブランド「Strad Copy」は、学生からプロまで幅広く使われている。

9.盗難・偽造の歴史も多い
•多くのストラディバリウスが盗まれており、時には数十年後に発見されることも。
•偽物も非常に多く、「Stradivarius」とラベルが貼られていても本物でないことがほとんど。

10.「メサイア」は未使用で奇跡の保存状態
•オックスフォードのアシュモレアン博物館に展示されている1716年製のMessiah(救世主)は、ほぼ弾かれておらず、新品同様の保存状態。

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