2025/12/14
日本音楽能力検定協会です。
今回は「作曲は理論でやるべきか、それとも感覚でやるべきか?」について詳しくご説明させていただきます。
これは、作曲を学び始めた人からプロを目指す人まで、ほぼ全員が一度は悩むテーマです。
SNSやYouTubeを見ても、「理論は不要」「いや、理論がないと再現性がない」など、真逆の意見が並び、余計に混乱してしまうこともあるでしょう。
結論から言えば、作曲は「理論か感覚か」という二択ではありません。両方が必要であり、役割が違うのです。
本記事では、それぞれのメリット・デメリットを整理しながら、最終的にどのように両立させるべきかを解説していきます。
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感覚で作曲するとはどういうことか
感覚で作曲するとは、頭で考えすぎず、浮かんだメロディをそのまま形にし、「気持ちいい」「切ない」「かっこいい」といった主観を頼りに音を選ぶという作り方です。
この方法の最大のメリットは、初期衝動の強さです。
感情から直接生まれたメロディやリズムは、理屈を超えた説得力を持つことがあります。実際、多くの名曲は「理論的に作ろうとして生まれた」のではなく、「ふと浮かんだフレーズ」から始まっています。
また、感覚作曲は初心者でも始めやすく、「作る楽しさ」を感じやすいのも大きな利点です。
理論を学ぶ前に挫折してしまう人が多い中、感覚で音を触ることで「自分にも作れる」という成功体験を得ることができます。
しかし、感覚だけに頼る作曲には明確な限界もあります。
感覚だけの作曲が抱える壁
感覚作曲を続けていると、次のような壁にぶつかりやすくなります。
・毎回似たような曲になる
・コード進行がワンパターン
・他人に説明できない
・修正やアレンジができない
これは、「なぜ良いのか」「なぜうまくいかないのか」を言語化できないためです。
感覚は非常に優秀ですが、再現性が低いという弱点があります。
たとえば、「今回はたまたま良い曲ができたけど、次は全く浮かばない」という状態は、感覚作曲あるあるです。
プロの現場では「たまたま」は通用しません。期限があり、修正依頼があり、別バージョンも求められます。そのとき、感覚だけでは対応できなくなるのです。
ここで必要になるのが「理論」です。
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理論で作曲するとはどういうことか
理論で作曲するとは、
・音階
・コード
・機能和声
・スケール
・コード進行の型
などを理解した上で、「狙って音を選ぶ」作曲方法です。
理論の最大のメリットは、再現性と説明力です。
「この場面ではこのコードが合う」「このメロディはこのスケール内だから自然に聴こえる」といった判断ができるようになります。
また、理論は問題解決の道具でもあります。
「なんとなく違和感がある」という感覚を、「ここはノンダイアトニックが急すぎる」「機能が曖昧」と分析し、修正できるようになります。
一方で、理論にも誤解されやすい欠点があります。
理論作曲の落とし穴
理論を学び始めた人が陥りやすいのが、
「正しい音しか使えなくなる」
「間違えないことが目的になる」
という状態です。
理論は本来、音楽を縛るルールではありません。しかし学び方を間違えると、作曲が「計算問題」になってしまいます。
結果として、整ってはいるが感情が動かない曲になりやすいのです。
ここで重要なのは、理論は音楽の説明書であって、音楽そのものではないという認識です。
理論と感覚の正しい関係
多くのプロ作曲家は、次のような流れで作曲しています。
-
まず感覚でアイデアを出す
-
理論で整理・補強する
-
もう一度感覚で聴き直す
つまり、感覚が主役で、理論は補助輪です。
感覚だけでは不安定、理論だけでは無機質。
この二つを往復することで、初めて「伝わる音楽」になります。
理論を学ぶ最大の目的は、
「感覚を否定すること」ではなく
「感覚を再現・拡張すること」
なのです。
初心者はどちらから始めるべきか
初心者におすすめなのは、感覚7:理論3くらいのバランスです。
最初から理論を完璧に理解しようとすると、ほぼ確実に挫折します。
それよりも、
・簡単なコード進行
・よく使われるスケール
・基本的な構造
だけを押さえ、あとは感覚で作るほうが続きます。
作った曲を後から理論で分析する、という順番が理想的です。
作曲は「感覚を理論で支える」もの
「作曲は理論か感覚か」という問いに対する答えは、
感覚を中心に、理論で支えるです。
感覚は創造の源、理論は安定と再現のための道具と考えると理解しやすいかも知れません。
どちらか一方を選ぶ必要はありません。
むしろ、両方を使えるようになったとき、作曲は一気に自由になります。
もし今、「感覚だけで限界を感じている」「理論を学んだのに曲が楽しくない」と感じているなら、それは成長のサインです。
感覚と理論、その間を行き来しながら、自分だけの音楽を作っていきましょう。